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~しなやかに したたかに~  乳がんとのお付き合い
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2004年10月、当地は台風で大きな被害を受けた。幸い我が家は断水した程度で済んだのだが、被災後の何週間か仕事が大変忙しくなった。乳ガン検診の受診票が届いていたのだが、忙しさのあまり忘れていた。そして・・・。
 
翌年の夏が過ぎた頃、右胸のしこりが妙に気になり始めた。コロコロした感じではなく、根を張ったようになり痛みもある。「ガンは痛くない」という印象があったのだが、このしこりの感触はどこか不気味だった。また、夕食後横にならずにはいられない「だるさ」も気になった。悩んでいても仕方がない。安心するなら早い方が良いし、安心できないのなら尚更早い方が良い。
 
乳ガン検診の時期だったが、検診を受けても「要精検」になるに違いないから、普通に外来を受診する方が早く診断がつくだろうと考えた。どの病院に行くか少し迷ったが、とにかくガンの治療ができて、乳ガン検診のできる病院なら間違いなかろうと、子供がよくお世話になる総合病院に行くことにした。
 
小児科の混雑を思うと、外科は拍子抜けするぐらいの待ち時間だった。問診票に記入して数分後、診察室に入ったが座る間もなくマンモを撮ってくるよう指示された。医師はナカナカのイケメン風だったので、もっとよく眺めていたかったのだが患者の身ではそうもいかない。
 
マンモ(マンモグラフィー)は、乳房のX線撮影で、オッパイをプラスチック板で挟んでノシイカ状態にして撮影する。とても丁寧に挟む理由や着衣で撮影できない理由を説明してくれる。接遇はハナマルだ。傍らのCDラジカセから穏やかな音楽が流れれおり、これで美味しいコーヒーがあれば・・・と不謹慎なコトを考えたのがいけなかった。
 
まず上下に挟むのだが、コレが痛い。噂に違わず痛い。「身体に力が入ると余計痛いから深呼吸しましょうね」と優しく声をかけてくれるのだが、そう言いながら締め上げている。「痛いですね。これぐらいにしておきましょうね」と言いつつ、しっかり締め上げている!
 
やっと撮れたと思うと、「ちょっと写りが良くなかったので、もう一枚撮らせて下さいね」と言われる。(ヤバイ)頭の中で警戒信号が一つ灯ったが、「締め上げの刑」の痛さが不安感を消していた。
 
縦方向に挟んでの撮影は、上下挟みほど痛まなかったが、終ったときは足がヨロヨロするほどぐったりしていた。
 
再び外科に行くと、イケメン医師は軽く触診しながら言った。「あぁ、ここに・・・あるね」主語を省かれたのが気になる。愛想も悪いが、検診では余り触らない鎖骨のあたりや頚のリンパ腺まで触るのも気に入らない。そして「次、エコーね。月曜日。」その間、全く私の顔も見ない。ちょっと~、それだけ?再び警戒信号が灯った。今度はハッキリと。大抵、心配することがなければ写真を見せて説明がある。どうも挙動不審だ。
 
診察室の扉には「医長 佐藤」と札がかかっている。全くのタケノコ医師で、自分で判断できないというワケではないようだ。ということは・・・。
 
 
・・・本当なら忙しいので余り仕事を休みたくない月曜日。けれど、前回のイケメン医師の期日指定は異議申し立てができそうにない響きがあった。この間にネットなどで「乳ガン」を調べる気にならなかった。調べるのは診断が確定してからで良い。ガンには敏感な家庭に育ったので基本的なことはわかっているつもりだし、診断名を聞く前にあれこれ調べるのは不安になるばかりだ。
 
暗いエコーの部屋で、ベッドに横になっていると、見知らぬちょっと年配風の白衣の人物が奥からやてきた。「この人、誰?この前のイケメンは?」疑問符が渦巻く中、「ちょっと触らせて~」と気楽そうに声をかけられる。どうやらこの人物も医師のようだ。
 
触診も数日前のイケメン医師より痛くなかったが(それでも痛かったが)、しこりに触れると「あぁ、コレやねぇ」とまたしても主語抜きだ。主語には「しこり」でなく別の言葉が入るようだ。しこりの周辺は軽く触れても痛いので、エコーでぐいぐい押されると、とても痛いに違いない。覚悟を決めたが、拍子抜けしたことに殆ど痛まなかった。
 
エコーをしながら「ご結婚は?」と尋ねられる。「キターーーー!!」盛大に警戒信号が灯りサイレンの音まで聞こえるようだ。この家族調査の目的がナンパでないのは明白だ。良からぬモノが見えたに違いない。ちなみに私は昔結婚していたが、今は花の(少し萎れているが)独身で子持ちだ。続いての「お子さんは?」の問いに答えたあと、我慢できずに聞いてみた。今の段階ではハッキリ答えてくれないだろうけど。「余り・・・良くないものが見えているようですね」数秒の間があった。この数秒で私の疑念は確信になった。そしてこんな言葉が聞こえた。「・・・悪性を思わせる所見がありますねー」
 
まさかこんなにアッサリ言われるとは思わなかった。(が、私は白黒ハッキリさせたいタチなので有難かった)続けて「温存できますよ」ときた。ガンは確定したようだ。「後顧の憂いのないようにスッキリ全部摘ってもらっても良いんですケド」と言うと「いやいや乳癌学会の指針では・・・」と温存のガイドラインの説明が始まった。これは事実上の告知ではないか。こんなオッパイペロン状態で、名前もわからぬ人物から告知(の内示)を受けるとは・・・トホホホ・・・。
 
予想していた結果である。「参ったな」と思ったが、口に出すと病気に対して「参りました」と白旗を上げるような気がした。代わりに「キツイな」と呟いてしまう。厳しい試練だけれど必ず勝ってみせる。謎の人物は何も言わない。正体不明の人物だけれど(後日、外科部長と判明)私の宣戦布告を聞いてもらう。乳ガンは再発せずに10年経つと「治った」ことになるらしい。だから「あと30年は元気でいたいんです」と。
 
あと30年生き延びるための条件はそろっているだろうか。「リンパ腺は大丈夫ですか?」と尋ねると「今、診てるけど・・・かなり調べてきたんですか?」と怪しまれる。よくよく考えてみると「30年」だの「リンパ腺」だの口走る前に「癌ですか?」と聞き返すのが一般的だったように思う。ついでにもう少し取り乱した方が自然だったのかもしれない。
 
などと考えているうちに、エコーが終わり次のメニューが示される。いかにも痛そうな「穿刺吸引細胞診」だ。「針を刺してズリズリして細胞を採りますからね~」と気楽そうに言われる。この痛いオッパイに針を刺すなんて、考えただけでも倒れそうだ。「準備ができるまで外科の前で待っていて」と言われる。
 
かなり呆然としながら(それでも香りを楽しみながら)外科の前の待合室でコーヒーを飲んでいた。ブラックの濃いの。すると白衣のお兄様方が4,5人わらわらと集まってくる。「準備ができるまで」というのは「ギャラリーが集まるまで」という意味らしかった。
 
「痛いのイヤです~できれば遠慮したいです~」と最後の抵抗をするが「出産を経験して人なら大丈夫」と言われる。だが私は帝王切開しか経験していないのだ。全然”大丈夫”ではない。
 
散々怖がって文句を言ったが、針を刺されるときの痛みは殆どなかった。普通の注射より痛くないぐらいだ。ヤレヤレこれなら楽勝と思っていると、痛いしこりの部分をつまんでズリズリされる。これが痛い。いやマンモよりマシかな?ちょっと~またズリズリするの~もう限界!限界だっちゅーの!!(さすがに声には出さなかったが)心の中で叫んでいると、やっと針を抜いてもらえた。医師は「ちゃんと採れてる♪」と嬉しそうというか楽しそうだ。思わずしっかり見てしまう。生タラコをほぐして黄色くしたようなモノが、薄い赤色の液体とともに入っている。本当にちゃんと採れているんでしょうね。こんなに痛い目に遭って「判定不能」なら二度と来ないからね。
 
この細胞診の結果は4日後ということだが「今の段階では殆ど黒。しこりの大きさは1.8cmぐらいなので、ギリギリでステージⅠ」と言われる。ということはリンパ腺への転移は見られなかったようだ。しかし、この段階で「ステージ」なんて言葉が出るかなぁ・・・
 
4日後の予約票を見て初めてこの医師の名前がわかる。田中先生だ。
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